いけばなというものは、その流儀をひと口に語ることはできません。なぜなら、長い歴史を辿る中で、さまざまな流派に分かれ、独自の方法で発展してきたからです。それぞれの流派では、「家元」と呼ばれる家筋(あるいは当主個人をさす)が、その流派を正式に継承しています。この家元制度は、茶道や能楽など、日本の伝統的な芸道の多くにみられるものです。
(Photo: PIXTA)
現在日本には300以上の流派があり、それらを代表するのが「三大流派」といわれる「池坊」「草月流」「小原流」です。流派の考えや特徴を知ると、いけばなを始めたいと思ったときに、自分に合った流派を探すのに役立ちますし、鑑賞するときにも、作品のすばらしさをより深く理解することができるようになるでしょう。
池坊
いけばなの創始者である池坊専慶から続く、日本で最も古く続く「いけばなの根源」。池坊専慶は、六角堂 (正式名称:紫雲山頂法寺)という、587年建立の歴史あるお寺の僧侶であった。現在でも、六角堂の住職といけばなの家元を、代々池坊が務めている。現在の家元は45世池坊専永氏、時期家元は池坊専好氏。
六角堂 (Photo: PIXTA)
池坊のいけばなには、「立花」「生花」「自由花」の3種の形式がある。立花と生花においては、伝統的な規範をもつ「正風体」を継承しつつも、表現内容に重きを置いた、型にとらわれない「新風体」のスタイルも展開。自由花においては、イベントやステージなど、さまざまな場所での空間演出に活躍し、いけばなのもつ表現の可能性を常に開拓し続けている。
一般財団法人池坊華道会
Ikenobo 9F, Rokkaku-dori, Higashi no toin, Nishi iru, Chukyo-ku, Kyoto
075 231 4922
小原流
19世紀末、小原雲心によって「盛花」という形式がされ、小原流のはじまりとなる。今では一般的となった、水盤と剣山という道具を用いるを生み出した。現在の家元は小原宏貴氏(1995年継承)。
小原宏貴氏 (Photo: 小原流)
西洋の花も花材として用いることができ、洋室やテーブルなどにも飾れる盛花の確立は、西洋の生活様式が取り入れられ始めていた明治時代の日本に広く受け入れられた。
(Photo: 小原流)
小原流の盛花には大きく分けて2種類がある。自然景観を水盤の中に再現する「写景盛花」と、植物の色や形の美しさを表現することに重きを置いた「色彩盛花」だ。その他、花瓶にいける「瓶花」、現代空間に生けることを意識した「花意匠」、シンプルな立体美をとらえた「花奏」などがある。
一般財団法人小原流
[神戸事務所]4-12-70 Sumiyoshi yamate, Higashinada-ku, Kobe, Hyogo
078 811 0871
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草月
形式にとらわれない自由な表現美を求め、1927年に当時27歳であった勅使河原蒼風)が創始した。家庭での楽しみから公共空間の大型ディスプレイに至るまで、あらゆる場所を植物の美しさ・力強さで彩ってゆく。現在の家元は、2001年に就任した勅使河原茜氏。
勅使河原茜氏 (Photo: 草月会)
1950年代から70年代にかけて、欧米の各地で展覧会などの活動を精力的に行い、フランスの芸術文化勲章をも受賞した蒼風氏。草月の精神とともに「日本の伝統芸術を世界に」のこころも受け継がれ、現在も、世界各国約120に及ぶ支部・スタディグループの広がり、海外でのセミナー開催、英語が併記された教科書など、文化の架け橋としての活動もとどまることを知らない。
(Photo: 草月会)
一般財団法人草月会
7-2-21 Akasaka, Minato-ku, Tokyo
03 3408 1154
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SENDA MAYU/ kilala.vn