東京から南に約1000km。東京の竹芝桟橋(TakeshibaSanbashi)から船で25.5時間かかる場所に、小笠原諸島がある。30個ほどの小さな島が点在し、総面積は約104km2。島が誕生してからの長い歴史の中で、大陸と陸続きになったことがない。海流や風に運ばれてきたもの、鳥のように自ら飛んできたもの、さまざまな要因で島にたどり着いた生き物たちが、長い年月をかけて独自の生態系を作り、進化をしてきた。数多くの固有種を有する、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる神秘の島。その特異な自然環境が評価され、2011年、世界自然遺産に登録された。
父島の境浦から見る夕日。戦時中に座礁した「濱江丸」という船が遺っていることでも有名 (Photo: Ogasawara Village Tourism Bureau)
ザトウクジラの観察は、2 – 4月がベストシーズン (Photo: Ogasawara Village Tourism Bureau)
陸地に生息するカタツムリなどの貝類は、小笠原諸島にいるだけで100種を超えているが、そのほとんどが固有種だ。殻の形や色が生活場所によって違うのが、生き物の進化の意味を物語っている。哺乳類で唯一の固有種は、オガサワラオオコウモリ(Pteropuspselaphon)。広げると90cmにもなる翼で島を飛び回り、種子や花粉を運ぶ役割を担っていることから、森林を育む「森の守り神」ともいわれている。
人間が行き来するようになり、元来、小笠原諸島に生息していなかった生き物が人間によって持ち込まれると、それらが島の生態系を乱し始めた。グリーンアノール(Anoliscarolinensis)というトカゲは島の昆虫を食べ、猫は野生化して鳥を襲い、生命力の強いアカギという樹は、固有種の樹を淘汰している。
絶滅危惧種に指定されているコアホウドリ (Laysan albatross) (Photo: Ogasawara Village Tourism Bureau)
SENDA MAYU/ kilala.vn