田辺伴一さん:70年にも及ぶ家業である真珠の養殖業を継いだ

Bài & ảnh: Lam PhongOct 15, 2018

平成28年5月、三重県伊勢志摩においてG7サミットが開催されたとき、日本政府が各国首脳に贈呈したものの中に、田辺真珠養殖場(英虞湾)の小さな真珠で作られた特別な贈り物がありました。その3代目オーナーである田辺伴一さんはパールジュエリー界のビッグネームであり、「田辺パール」の製品は香港、ドイツ、アメリカ、カナダ、台湾、中国などのビッグマーケットで扱われています。田辺さんが世界中の国々に真珠養殖の技術を伝える中で、ベトナムのフーコック島でも養殖事業に乗り出すことになりました。今回、ホーチミン市での滞在中にお時間を頂戴し、家業である真珠の養殖業について伺いました。 
田辺伴一さん
田辺伴一さん。

英虞湾の真珠の養殖は、他の地方に比べるとどのような違いがあるのでしょうか。
英虞湾は、1888年に御木本幸吉氏が真珠の養殖業を開始した真珠発祥の地です。300以上の真珠養殖場がここに集まり、家業として代々継承されてきたのです。私の場合は、祖父が創業者であり、私が36から37年にわたって受け継ぎ、さらに100年企業となることを目指しています。

英虞湾で活用される真珠養殖の技術はどのような特徴があるのでしょうか。
英虞湾の技術は、150年前に御木本幸吉氏が残した完璧な遺産であるがゆえ、世界最高峰といわれます。日本の原風景が残っている、ミネラルを豊かに含んだ英虞湾は、真珠にとって最適な環境でもあり、科学界からも高い評価を得ています。
田辺伴一さん
田辺伴一さん。

真珠ができるまでの養殖の過程をご紹介していただけないでしょうか。
まずは厳選された稚貝を2年間かけて育て、3年目になると母貝の生殖巣に真珠の素になる“核”を手作業で入れます。体力の弱い母貝なら1年後に収穫することができますが、真珠の品質はほぼ不良です。良質の真珠を収穫できるまでは最低でも2年間かかります。5年にも及ぶ養殖期間中には数えきれないほどたくさんの貝が死んでしまい、非常に過酷な過程でありますものの、アコヤ真珠ならではの価値を高めることに繋がります。人工真珠とはいえ、すべてが自然の環境で生まれた逸品です。 

英虞湾の真珠と他国の真珠の違いは何でしょうか。
英虞湾の真珠は日本でしか取れないアコヤ貝を母貝としたものであり、他を圧倒するほどの光沢が特徴のひとつです。また、緑、浅ピンク、浅灰色、青灰色、黄色、白、黒灰色といったたくさんの異なる色があり、その彩色は英虞湾の蓄えたミネラル分によって左右されます。水中に漂っている数々のプランクトンも、アコヤ貝の主な餌となります。
英虞湾の真珠
発明王トーマス・エジソンは英虞湾の真珠の品質と美しさを評価するとき、「これこそ真の真珠だ」と認めました。

真珠の価値を決めるのは大きさですか。
色、光沢、形などの指標で決まります。大きさは大した要素ではありません。

大きめの真珠と小さめの真珠と、どちらのほうが作りやすいでしょうか。
真珠の大きさは“核”次第です。田辺パールといえば、最小が3mmの珠、最大が10mmの珠を作ることができますが、どちらも高度な技術が求められます。小さめの真珠を作るためには細かさと慎重さが必要になりますが、成功率はそれほど高くないです。大きめの場合は、核入れの技術も難しく、成功率も非常に低いです。
真珠収穫の光景
真珠収穫の光景。

G7サミットにて、田辺パールのジュエリーが各国首脳とその夫人への贈呈品として選ばれた理由は何だと思われますか。
それらはジュエリーデザインアワードで受賞した作品であり、開催地は真珠発祥の地である三重県でした。「ベビー真珠」と呼ばれる小さな真珠を作れるのが世界でもたった3カ所のみであり、田辺真珠養殖場がその一カ所に数えられます。G7サミットの各国首脳への記念品を作るように依頼されたことを光栄に思います。

パールジュエリーが最も売れた市場はどちらでしょうか。 
他の市場と比べるとアジアが主要な市場です。日本市場はともかく、田辺ジュエリーの輸出額の約3分の2を占めるのが香港市場であり、中国と台湾も大きな消費市場となっています。ベトナムで2回行った展示会を通して、真珠の養殖業をやっているこちらも潜在的な市場だと予測しています。  
田辺さんが女優のKim Tuyenさんにベビー真珠のジュエリーを贈呈
田辺さんが女優のKim Tuyenさんにベビー真珠のジュエリーを贈呈。

何回もフーコック島を調査に訪れ、自らの経験や養殖技術を伝えられたと伺いましたが、フーコック産の真珠の品質についてどう思われますか。
四季折々の変化に恵まれる日本で生存するため、貝は絶え間なく体質を変えたことで、真珠の光沢も美しさも群抜です。一方、ベトナムの海水温度は非常に高いことから、貝の寿命は短くなります。養殖期間がほぼ1年以内となっており、延長すればするほど貝が死んでしまうリスクも高まります。しかし、貝の寿命に合わせて養殖工程を維持すると、表面光沢の良い真珠を収穫できません。これが、高温海の真珠が低温海の真珠に負ける原因とされています。 

デザイン面ではどのターゲットを狙っていますか。
弊社は若者を対象にしています。シンプルでおしゃれなデザインの日常使いのジュエリーなら、国内市場でもよく売れます。世界のトレンドを追いかけてデザインされ、特別な機会にふさわしい高級ジュエリーも弊社の手で作られています。

ありがとうございました!

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